Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident


Draft document: Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident
Submitted by Masashi Shirabe, Tokyo Institute of Technology
Commenting as an individual

今回の改定で欠けていることについて指摘したい。
福島第一原発事故に対する日本政府の対応から判断して、今回提案された改定がなくとも、ICRP Pub.103の枠組みを遵守しただけで現実に行われたよりは遥かに優れた対応ができたと考えられる。

すわなち、

(1)(今回の改定案でも強調されているが)最悪をも想定した防護計画・避難計画が(可能なら住民も交えて)作成されていなかった。
(2)被害を受けた住民が事故後の防護策・計画の策定や評価に対して実質的には全く関与できなかった、
(3)(2)に関連しては、住民の参加が実現できなくとも、放射線防護の専門家以外、たとえば、社会科学の専門家などを含む多様な専門家を関与させるべきであったが、それもほぼ実現できなかった。
(4)どの地域・区域が緊急時被ばく状況にあり、あるいは現存被ばく状況にあるのかを明らかにしないまま、どのような原則で個別の対策・計画が作成されたのかが全く明らかでなかった。
(5)(4)に関しては、とくに緊急時被ばく状況から現存被ばく状況への移行が不明確であっため、結果として、緊急時被ばく状況におけるreference level(の下限)である20mSv/yearのみしかreference levelとして機能せず、そのため今回の被害の中では中程度の汚染地域に住む住民の選択肢がなくなってしまった。

これらは政府の対応がICRP103の枠組みの中で記載されていたのとは違う形で進められたために生じたことであり、それがまた今回の対応が必ずしもうまく行かなかったことへとつながっている。すなわち、ICRP勧告のつまみ食い的な適用が日本政府対応の失敗につながったと考えられる。
  したがって、各国の事情に応じて裁量範囲が設定されるのは当然であるにせよ、勧告を一つのパッケージとして適用しなければ十分な効力を発揮しないということを改定の中で書き込むべきである。

 なお、(2)に関しては、一方でジャック・ロシャール氏を中心としてICROPがベラルーシのEthosに倣って福島Ethosを導入して活発に活動したことについて猛省をICRPに促したい。Ethosは住民も参加した上で防護策や計画が策定されたのちに進められるべきものであり、政府や専門家が一方的に策定した防護策の穴を住民の自助努力で埋めるための活動ではないはずである。ICRPはEthosを行う前に、政府の防護策の策定プロセスについて改善を促すべきであった。


Back